| 2000年10月22日 信徒伝道週間最終日主日夕礼拝説教 「命を受けて」 ヨハネによる福音書20章19-29節 |
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「わたしを見たから信じたのか。見ないのに信じる人は、幸いである。」(20節)との御言葉を受けたのは、トマスだけなのでしょうか。本来は20章で終わっていたとされるヨハネによる福音書の結語です。これが「みなければ信じない」と断言したトマス一人に向けてだけ語られた言葉であったなら、ヨハネによる福音書の結語は、神の裁きの宣言ということになります。しかしこの言葉は、信仰の第二、第三世代、その後に続くすべてのキリスト者に向けて語られている言葉でもあると思うのです。というのは、主イエスが、十字架にかかられる前、こう祈っておられるからです。 「また、彼らのためだけでなく、彼らの言葉によってわたしを信じる人々のためにも、お願いします。」(17章20節)。 ですから、「見ないのに信じる人は、幸いである」との御言葉は、弟子たちの言葉を聞いて信じる者となったすべてのキリスト者の幸いを告げる祝福の言葉なのです。さらに、伝道は、信じる者たちを、神の祝福へと招く、喜ばしい業であることをも明らかにする言葉であります。 悔い改めるトマス 「わたしは信じない」と断言したトマスに、復活の主はご自身を顕されました。「あなたの指をわたしの手に、あなたの手をわたしのわき腹に」と語られる主の言葉に、トマスは自己の罪深さを知らされて震撼したに違いありません。主イエスの体に向けて突き出される指、差し伸べられる手は、主を十字架に釘つけた兵士たちの金槌、突き出した槍を思い起こさせるに充分だったのですから。主を十字架につけたのはわたしだとトマスははっきりと認識したに相違ありません。「わたしの主、わたしの神よ」との、彼の信仰告白は、深刻な罪の自覚と結びついているのです。 12人の1人 11章と14章で登場し、読者になじみ深いトマスについて「12人の1人で」とわざわざ説明しているのには意味があります。この表現は、イスカリオテのユダの場合に用いられた言葉です(6章70、71節)。つまり、主を売り渡した裏切り者ユダとトマスは同罪なのだと言っていることになります。さらに、ペトロもアンデレもピリポもヨハネも、みな12人の1人であることに変わりはないことを告げているのです。 恐れと平安 「弟子たちはユダヤ人を恐れて」(19節)とあります。生まれながら目の見えない息子をいやしていただいた両親も、ユダヤ人たちを恐れて、息子に聞いてくれというのが精一杯でした(9章21-22節)。ユダヤの議員をしていたアリマタヤのヨセフも「イエスの弟子でありながら、ユダヤ人たちを恐れて、そのことを隠していた」(19章38節)とあります。「あなたのためなら命を捨てます」(13章37節)と決意したペトロもユダヤ人たちを恐れて挫折したのです。 弟子たちが一番恐れていたのは、ユダヤ人たちを恐れるあまり、裏切ってしまった復活の主イエスとの遭遇だったのではないでしょうか。そのお体に残されている傷の責任は、自分たちにこそあることを彼らは知っていたのですから。 傷跡を示されるに先立って「あなたがたに平和があるように」と主イエスは繰り返しておられます(19、21、26節)。わたしたちの恐れを、主イエスの側が乗り越えてくださったのです。 わたしたちにも様々な恐れがあります。恐れは必ず不信仰と結びつきます。なぜなら、「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている」(16章33節)との主のお言葉に立っていないからです。恐れと不信仰を克服するすべはわたしたちにはありません。しかし、全てをご存じの主が、全てを赦し、受け入れてくださるなら、わたしたちは主との間に平和を得ることができるのです。 罪の赦しの福音 「父がわたしをお遣わしになったように、わたしもあなたがたを遣わす。」(21節)伝道への派遣の言葉です。派遣にあたって主イエスは、聖霊と、罪を赦す権威を弟子たちに与えられます。罪を赦す権威を託されるのにふさわしい人はどのような人でしょうか。 レンブラントの影響を受けたオランダの画家にパウルス・レシーレがいます。彼の絵画に「ペテロの悔悛」があります。左手で頬づえをつくペトロの顔には、涙が流れています。肘の置かれた机の上には、主から託された天国の鍵(マタイによる福音書16章19節)が大きく描かれています。顔に溢れる涙は赦されている喜びと悔い改めを受け入れてくださっておられる主への感謝を表わしているのでしょう。罪の赦しの福音を託されて伝道へと派遣される者は、自身が罪の赦しを経験し、福音に生きている者であるべきことを、彼は描いているのだと思います。 「見ないのに信じる人は、幸いである。」との主の言葉に、福音に生きる伝道者はみな、トマスと共にアーメンと感謝してお答えするのです。 |
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