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銀座の鐘

「パウロの確信」

説教集

更新日:2020年07月05日

2020年7月5日(日)聖霊降臨後第5主日 主日(家庭)礼拝 髙橋 潤 牧師

使徒言行録16章6~10節

使徒パウロは、回心前、キリスト教徒を迫害する急先鋒でした。信仰の人ステファノを処刑す る殺害計画に賛成し、ステファノの殉教を目のあたりにしたほどです。そのようなパウロが、 ダマスコ途上、主イエスの声を聞き回心し、迫害者からキリストの福音を宣べ伝える伝道者に 方向転換しました。この回心によって、パウロは、エルサレム教会のペトロはじめ主イエスの 弟子たちからも、同時に回心によって裏切ったユダヤ人たちからも信用も信頼もされない立場 に立たされていました。助け手がいなければ、何もできないのです。そのような時、エルサレ ム教会とパウロの間に立って、執り成し役をしたのがバルナバでした。パウロにとってバルナ バは、最初に信頼してくれた恩人です。しかし、パウロは、第2回伝道旅行の同行者を巡って 、恩師バルナバと対立してしまいます。そして、とうとう別の道を行くことになりました。分 裂のきっかけは、バルナバがマルコと呼ばれていたヨハネを連れていきたいとの提案に対して 、パウロは、以前自分たちから離れていったヨハネを連れて行くべきではないと伝道の同伴者 を巡る分裂を経験します。

16章から始まる、第2回伝道旅行は、バルナバと別れ、パウロは、シラスを選び出発しまし た。シラスは、エルサレム教会の会議で選ばれ、アンテオキアへ派遣された一人です。ですか ら、バルナバ同様シラスは、エルサレム教会から信頼されてました。伝道旅行に出発してまも なく、デルベに到着して弟子のテモテと会いました。パウロは、このテモテもつれて行くこと にしました。テモテは、ギリシャ人の父とユダヤ人の母をもつ青年でした。パウロは、伝道旅 行に同行させるため、テモテにわざわざ割礼を受けさせました。テモテの割礼は、ユダヤ人伝 道のために好印象を与えるためであり、異邦人伝道では意味のないことでした。テモテの割礼 は、パウロの信念では不要のはずですが、ユダヤ人伝道のためにユダヤ人にはユダヤ人のよう になって取り組む姿勢を表明したと思います。

パウロたちの第2回伝道旅行の準備と日程を総合的に見ると、同行者シラスの選択、テモテの 割礼やアジア州への経路など、どれをとっても第2回伝道旅行は、明らかにユダヤ人伝道を目 的としていたことは明白です。パウロの伝道は、第1回伝道旅行の時もそうですが、訪問地に 到着するとユダヤ人たちが集まるシナゴーグに行き、そこで主イエス・キリストの十字架と復 活の福音を語っていました。パウロはシラスとテモテを連れて、アジア州に拠点となる教会を 設立しようと幻を描いていたと思います。

しかし、そのようなアンテオキア教会とパウロたちが練りに練った伝道計画は、どうなったのでしょうか。計画変更を余儀なくされてしまいました。具体的な理由は、分かりません。聖書 に記された理由は、「聖霊から禁じられた」と「イエスの霊がそれを許さなかった」と記され ています。二度に亘る計画変更を強いられました。

伝道計画を変更しなければならなくなった理由は、想像するしかありません。第1回伝道旅行 の延長で考えるならば、パウロ暗殺計画があったことなどが考えられます。しかし、教会とパ ウロが練りに練った伝道計画を変更しなければならない事態に注目すべき事があるのではない でしょうか。具体的な計画変更の出来事を知ることより、もっと大切な事がこの御言葉に込め られているのです。

それは、パウロが、教会や自分自身の計画と違った道を神のご計画として受け入れ、そこに聖 霊の助けを受け止めたということです。パウロが確信を与えられ、神のご計画に従ったという ことです。パウロたちの伝道方針と正反対のヨーロッパ伝道を主の導きとして受け止める事が 出来たということです。

私たちだったら、これほどの計画変更は、伝道旅行の失敗、挫折、解散ということになる事態 です。しかし、パウロは、神の御前に砕かれ、挫折の中に神の導きを確信したのです。アンテ オキア教会とパウロの伝道計画は、ユダヤ人伝道を主たる伝道として開始することでした。し かし、神が示された伝道は、アジア州を飛び越えて、いきなりヨーロッパ大陸への伝道でした 。それが、マケドニア人伝道です。具体的には、フィリピやテサロニケに教会を設立していき ました。神の導きによる計画が実は、エルサレム教会を支えるための中心的支援教会設立につ ながったのです。神さまのご計画は、まことに不思議です。マケドニアの人々は、遠いエルサ レムのユダヤ人教会の最大の支援教会に成長していきます。マケドニア伝道は異邦人教会がユ ダヤ人教会を支援する体制を与えられたのです。
ローマ15:26:「マケドニア州とアカイア州の人々が、エルサレムの聖なる者たちの中の 貧しい人々を援助することに喜んで同意した」

結果的には、第2回伝道旅行の出発点であるアンテオキア教会から近いアジア州のエフェソ伝 道の道が閉ざされ、ヨーロッパへ渡ってフィリピやテサロニケへの伝道が先に行われました。 地域的に見るとユダヤ人伝道より異邦人伝道を優先したように見えますが、内実は、異邦人教 会がユダヤ人教会のために祈り、支援する関係を築くことができたのです。

パウロたちの伝道計画に反して、聖霊によるヨーロッパ伝道は、決して楽な道が与えられた訳 ではありません。少なくとも、パウロたちはユダヤ人への対応については、準備していました が、異邦人であるマケドニア人伝道のことは計画も準備もしていなかったと思われます。相手 を理解することや、協力者を探したりすることもできませんでした。しかし、神のご計画です 。神のご計画ならば、私たちは恐れることなく、身を委ねて進んで良いのです。人間的には、 無計画、無鉄砲な行動と映ったかもしれません。しかし、神のご計画です。神の救いの道が開 かれて行きました。使徒言行録は、神のご計画はこのようにパウロを用いて進んだと記してい るのです。その時、最も大切なことは、「神がわたしたちを召されているのだと、確信した」 という10節の御言葉です。私たちの思い、計画、価値判断を遙かに超えた、神のご計画を信 頼し、委ねて、その道を進むことです。

これが、神が私たちにお与えになる召命です。神は私たちを召すとき、私たちの経験も知恵も 計画も打ち砕かれることがあります。しかし、そこにこそ、神が召命をお与えになっているの です。主イエスの十字架は、ご自身がむち打たれ、砕かれる姿を身をもって示し、弟子たちは じめ私たちを打ち砕いた出来事です。神は十字架によって弟子たちに召命を与えました。私た ちは、教会の計画、役員会の計画、各委員会の計画、その中に神のご計画によって変更すると きがあることを覚えたいと思います。神のご計画に従う備えと余裕を持ち続けたいと思います 。具体的には、教会が決断を迫られるたびに祈ることです。すべての教会の集まりは、祈りを もってはじめ、祈りをもって閉じます。この祈る姿勢は、神のご計画に対して、心も体も謙虚 に聞く姿勢を現しているのです。私たちの計画、立案の際、いつでも聖霊なる神に委ねる信仰 を与えられていることを忘れてはならないのです。祈って、準備し、教会としての決断をした とき、それを実行します。しかし、いつでも御心を求め続けなければならないのです。時と場 合によって、計画変更もするのです。
私は、日本の説教者の一人、隠退後の島村亀鶴牧師から献身のすすめをいただきました。 伝道者になって34年間、繰り返し思い出す島村先生の言葉があります。それは、「あなたの わらじを主に委ねよ」という言葉でした。私はわらじをはいていたのではありませんでしたが 、自己実現ばかり考えていた私にとって、この言葉によって聖なる神の前に放り出された瞬間 でした。未熟な自分自身を見つめていた目を神さまに向けることができました。

教会の決断がその決定通り進まないこともあります。計画変更や計画頓挫など何度もあります 。未熟な計画であったと反省すると同時に、神の時が来ていないことを知る事があります。神 の御心を立ち止まって聞く時が必ず与えられます。
1:悪事を謀る者のことでいら立つな。
不正を行う者をうらやむな。
2:彼らは草のように瞬く間に枯れる。
青草のようにすぐにしおれる。
3:主に信頼し、善を行え。
この地に住み着き、信仰を糧とせよ。
4:主に自らをゆだねよ
主はあなたの心の願いをかなえてくださる。
5:あなたの道を主にまかせよ。
信頼せよ、主は計らい
6:あなたの正しさを光のように
あなたのための裁きを
真昼の光のように輝かせてくださる。

あなたの道を主にまかせよ    詩編37編1~6節

絶えず、主に立ち返り、教会の計画も、自分自身の人生の決断も、祈って主の導きを仰ぎ、主 に自らを委ねる姿勢を整えたいと願います。

祈り
天の父なる神さま。7月を迎え主の御前に立つことを赦され感謝いたします。自らの考えや計 画にこだわり固執する私たちです。聖霊の導きに聞く耳と姿勢をお与えください。主に委ね、 主が行う御業を喜ぶ者としてください。キリストの御名によって祈ります。
アーメン