銀座教会
GINZA CHURCH

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銀座の鐘

「恐れるな、語り続けよ」

説教集

更新日:2020年07月19日

2020年7月19日(日) 聖霊降臨後第7主日・創立130周年記念礼拝 銀座教会 主日家庭礼拝  髙橋 潤 牧師

使徒言行録18章1~11節

 本日は、銀座教会創立130周年記念礼拝です。
銀座教会の130年は、牧師、副牧師、伝道師、協力牧師、婦人伝道師、協力宣教師、信 徒説教者、教会学校教師を初めとして、数えきれいない方々が、御言葉を語り続けた歴史で す。銀座教会の大きな特徴は、音楽主任と聖歌隊による豊かな讃美と正午礼拝です。そして、 組会を中心とする信徒の集まりです。婦人会、一麦会、青年会、どの集会でも聖書の御言葉 が与えられます。語られた御言葉に讃美をもって応えた 130 年に感謝します。

本日与えられた聖書の御言葉は、パウロとその一行によるコリント伝道です。パウロたち は学問と政治の中心地アテネを離れ、商業都市コリントに入りました。一カ所に一年半とい うのは、パウロの伝道旅行地の中では大変長い滞在期間です。パウロたち一行は、コリント の信徒への手紙を読むと、アテネ伝道の困難ゆえでしょうか、衰弱していたようです。その ようなパウロに助け手が与えられました。ローマから来た二人に助けられたように、伝道に は絶えず助け手が与えられるのです。アキラとプリスキラのように名前が記されている人ば かりでなく、多くは無名の方々によって、大切な助けが与えられ、御言葉を語ることが出来 たのです。
 銀座教会の 145 年の伝道においても、米国の宣教師はじめ、牧師や伝道者だけでなく、東 京伝道のために多くの助け手が与えられ、伝道の土台が築かれていきました。

私たちはしばしば、自分は伝道のために何もしていない、役に立っていないと語ったり思 うことがあります。しかし、第一に礼拝に出席していることが伝道の助けです。家庭礼拝で 御言葉を読み、聞いていることが助けです。語られる御言葉を共に聞いていることが助けに なっているのです。礼拝のために時間を割き、共に祈ること、なくてはならない伝道の助け です。パウロに助け手が与えられたように、銀座教会に多くの助け手が与えられていること を感謝いたします。讃美歌を歌うこと、聞くこと、神さまに心を開いている姿は、すべて伝 道の良き助け手です。

 伝道の助け手となったユダヤ人を紹介しましたが、コリントにはパウロたちに反抗し口汚 くののしるユダヤ人もいました。そうかと思えば、会堂の隣に住んで、パウロたちを受け入 れたティティオ・ユストのようなユダヤ人もいたのです。さらに驚くことは、シナゴーグと 呼ばれる会堂において、パウロたちを罵るユダヤ人の中から、こともあろうにコリントの会 堂長クリスポが一家をあげて主を信じるようになりました。さらには、コリントに滞在する ユダヤ人だけでなく、多くのコリント人が洗礼を受けました。

 小アジア伝道の道が閉ざされ、ヨーロッパ伝道へ進むことになったパウロ一行は、伝道旅 行の途上、様々な人々に出会っています。コリントだけでも多様なユダヤ人がキリストの福 音に触れ、神のみ言葉を聞いていることは素晴らしいことです。
シラスとテモテがパウロに合流した後、パウロは御言葉を語る事に専念しました。彼らは ユダヤ人が集まる会堂で伝道しました。しかし、会堂で罵られたので、パウロは服の塵を振 り払って、会堂を出て行きました。どこに行ったかというと、会堂の隣の家、ティティオ・ ユストの家です。隣と行っても隣接していたのか離れていたのかわかりませんが、隣の家で パウロが語っていた主イエス・キリストの十字架と復活の話の続きを聞いたのかもしれませ ん。その結果、会堂長クリスポとその家族が主イエスこそ救い主と信じるようになったので はないと想像します。お隣の家から聞こえてくる福音を聞いて、信じるようになったと思う と、神の愛の業がこのように行われたと思います。
 現在、自宅での家庭礼拝報告の中には、普段教会に行くことのない家族に聞こえるように 音量を上げてます、という報告をききました。現代版、ティティオ・ユストの家の話はいく つもあると思います。「コリントの多くの人々もパウロの言葉を聞いて信じ、洗礼を受けた。」 と記されています。

 パウロの言葉とは、どのような言葉だったのでしょうか。パウロは、コリントの信徒への 手紙一 2 章で、コリント伝道当時のことを記しています。

「1 兄弟たち、わたしもそちらに行ったとき、神の秘められた計画を宣べ伝えるのに優れた 言葉や知恵を用いませんでした。2 なぜなら、わたしはあなたがたの間で、イエス・キリス ト、それも十字架につけられたキリスト以外、何も知るまいと心に決めていたからです。3 そちらに行ったとき、わたしは衰弱していて、恐れに取りつかれ、ひどく不安でした。4 わ たしの言葉もわたしの宣教も、知恵にあふれた言葉によらず、“霊”と力の証明によるもの でした。5 それは、あなたがたが人の知恵によってではなく、神の力によって信じるように なるためでした。」

 パウロがコリントに到着し、伝道を開始したときの様子が語られています。「優れた言葉 や知恵を用いなかった」というのは、律法学者として知識や教養によって語るのではなく、 十字架につけられたキリストをひたすら語ったということです。当時のパウロは、衰弱して いて、恐れにとりつかれ、ひどく不安でした。しかし、語り続けたというのです。パウロは 知識と教養があったから伝道することができたのではないと、はっきり告白しているのです。 パウロたちのコリント伝道の成果は、パウロの力ではなく、衰弱したパウロを神が用いて、 神の力を発揮する器としてくださったということです。

 会堂長の一家が主を信じるようになったことも、多くのコリントの人々が主を信じるよう になったことも、「パウロの言葉」を聞いたのですが、この「パウロの言葉」とは、パウロ の知恵ではなく十字架につけられたキリストであり、神の力によったのです。

 パウロは、話術や知識、経験の豊かさによって、人々がキリストを信じるように願ったの ではないのです。そうではなく、自らを神に用いていただく器として差し出し、人間の力で はなく神の力によって信仰が与えられることを信じて伝道したのです。
衰弱し、恐れに取りつかれ、ひどく不安だったパウロに主は、語りました。
「9 ある夜のこと、主は幻の中でパウロにこう言われた。「恐れるな。語り続けよ。黙って いるな。10 わたしがあなたと共にいる。だから、あなたを襲って危害を加える者はない。こ の町には、わたしの民が大勢いるから
 銀座教会創立記念礼拝において私たちに与えられた御言葉です。創立 131 年に向かって伝 道する私たちは、自分自身を見つめて語る言葉を探すのではなく、キリストの十字架を語り たいと願います。キリストの十字架を語ることとは、十字架上のキリストの祈りを聞くこと です。キリストの生涯を通して十字架に集中することです。
 神がパウロに先立って伝道しておられたように、私たちに先立って、全ての伝道者に先立 って伝道しておられる神により頼んで伝道してまいりましょう。私たちは神の伝道に加えら れているのです。神の伝道に巻き込まれ、もがくことも、恐れることも、不安にさいなまれ ることも、衰弱することもあるでしょう。しかし、それ以上に、神が共におられ、神に用い られる喜びが与えられるのです。私たちの前には、先だって道を照らす十字架の主イエスが おられるのです。

祈り
天の父なる神さま。145 年に亘る銀座教会の伝道に絶えず先立って導いてくださり感謝い
たします。私たちの先達を用いて伝道を進めたように、今日から、私たちを用いてくださる ことを感謝いたします。私たちが十字架のキリストを見つめながら、福音を語る者として用 い、導き、あなたの御名をほめたたえさせてください。福音を必要としている大勢のあなた の民に福音を届けさせてください。主イエスキリストの御名によって祈ります。