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銀座の鐘

「恵みの務めへの選び」

説教集

更新日:2020年07月01日

2020年6月28日(日) 聖霊降臨後第4主日 主日家庭礼拝  藤田 由香里伝道師

使徒言行録 13章1節~5節

 主イエスは、「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。(ヨ ハネ福音書15:16)」と言われました。キリスト教の選びは、このように神様が主体となられる 選びです。神様が私達の名前を呼んでくださいます。わたしが行動や時を選んだように思えても そこには神様の導きとご計画があります。本日は、「召命」・神様に呼ばれる「コーリング」に ついて聖書からお聞きしたいと思います。

 パウロのコーリングには、ある段階があるという風に考えることができます。それは、キリス ト者になるという選びと、具体的な恵みの奉仕への選びです。復活のキリストにダマスコ途上で 出会い回心しました。そして異邦人伝道に仕え・教会を建て・聖書の多くの手紙を記しました。 パウロは特別な宣教者に思えますが、私達一人ひとりもまたそうです。洗礼を受けて主イエスの ぶどうの木の一枝となり、更に恵みの務めが与えられます。

 本日の13章から、パウロの第一次宣教旅行が始まります。ここまで、パウロは洗礼を受けて から個人でキリストを宣べ伝えました。そして、ここアンティオキアにて、パウロの恵みの奉仕 への選びがなされます。パウロはここから、世界的な広いミニストリー(宣教)に参与していき ます。アンティオキアは、ローマ帝国第三の都市です。現在のトルコに位置します。そこからバ ルナバとパウロは船出していきます。主イエス・キリストの大宣教命令をそのまま実現していく 旅の始まりです。主イエスの福音が、全地へと今や広がろうとしていく始まりの地、アンティオ キア。希望に満ち溢れる始まりです。しかし、この場所に教会が立ったのは、エルサレムを追放 されたことによります。エルサレムでステファノの殉教をきっかけに教会に大迫害が起こりまし た。このことで、主イエスの御名を呼ぶ民は、散らされて北上し、このアンティオキアに留まり ます。そして、この町の会堂で、聖霊は彼らを助け、多くの異邦人信者が生まれました。このア ンティオキアで、彼らは初めて「キリスト者」と呼ばれるようになりました(使徒言行録11: 26)。宣教旅行の始まりには、主の御名を呼ぶことで迫害を受け、散らされた民がいました。 しかし、この消極的撤退に見えたものは、恵みの撤退でした。むしろ、神の選び、新たな務めへ の選びという積極的な意味が与えられました。

 ここにも表れますように、「選び」には、二つの側面があります。まず、神様から恵みによっ て選びだされるという側面と、今までいたある場所から区別されるという側面です。キリスト者 になるとき、私達もまた、この世界の価値観に従うのではなく、キリストにお従いするというこ とが求められます。キリストを主人とし、世にあって光の子として証しします。そこでは、世の 価値観から区別されるという側面があります。世の価値がどのようであっても、顔を上げて主を 喜び力強く生きる。主に従いキリストの愛に生きる。そのような恵みが与えられています。

 パウロとバルナバのこの選びの場面は、大きな希望を抱かせると申しました。散らされた民はこのアンティオキアで教会の豊かな成長を見て、神を讃美していました。この場面がとても輝か しいのは、心を一つにして主を礼拝している民の姿があるからではないでしょうか。バルナバ、 ニゲルと呼ばれるシメオン、キレネ人のルキオ、領主ヘロデと育ったマナエン、サウロ、ここに 集う5人の教師・預言者たちが、ひたすら心を主イエスに向けて神を喜び祝っていたからではな いでしょうか。彼らは断食をしていました。断食は神の啓示を受ける備えです。そして、この礼 拝の只中で、聖霊のお告げが豊かに告げられたのです。それが、バルナバとパウロへの恵みの奉 仕への選びの言葉となります。

「さあ、バルナバとサウロを私のために選び出しなさい。わたしが前もって二人に決めておい た仕事に当たらせるために」(使徒言行録13:2)

 復活の主イエスに感謝と献身の思いで礼拝を奉げていると、新たな務めへの任命の言葉が語ら れました。礼拝と奉仕は深く繋がっています。主を礼拝するところで恵みと力を頂き、応答と献 身の務めへと押し出されていきます。私達もまた、恵みの奉仕へと選びだされます。組会の働き 基礎集団・教会学校・こひつじルーム・サムエル会・証し・隣人のため届けられる言葉や祈り。 また自粛生活にある今、留まって家庭礼拝をお捧げすることもそうです。隣人の為にできる愛の 業があること、祈ること、聖書を読むこと、一つ一つが恵みの奉仕です。礼拝には神様の恵みの 泉が滾々と沸き出で、私達を根底から潤し・奉仕への力を与えます。
 また、この言葉は、パウロとバルナバの二人にだけ向けられた言葉ではありません。ここに集 い礼拝をしていた5名、教会に向けて語られた選びの言葉です。また、教会へのビジョンは、ア ンティオキア教会に対するものでけではなく、世界における主の御心を示します。主がご自身の 世界で、大きな業を始めようとされていることを伝えます。一つの教会の主の業は、また世界に おける主の御心を語ります。

 使徒言行録13章2節の「選び出しなさい」という単語は、ギリシャ語で「アフォリゾー」で す。元の意味は、「分離する」・「区別する」・そこから「選び出す」という意味になります。 ルカ福音書と使徒言行録では3回出て来て、ユダヤ教の会堂から「追い出す」「退かせる」と訳 されています。更に、旧約聖書ギリシャ語版に目を向けると、主が民を「聖別される」、献げ物 を「聖別する」という用法があります。選びには二つの側面があると冒頭で申しました。それは この言葉の意味にも如実に現れています。選びは、今所属するどこかから区別されるという面と 神ご自身が私達の名前を呼んで聖なるものとして選んでくださるという両面があります。ここで は、アンティオキア教会に集う教師たちの中から、バルナバとサウロはひと時分離されて、主イ エスの福音を告げ知らせる宣教旅行へと選ばれました。教会が広がっていくための選びでした。 日本にも多くの宣教師がそれまでの教会を離れて来てくださり、また教会から新たな教会を建て る為、教師達が遣わされていきました。

 パウロは三回の宣教旅行に行きます、バルナバと二人で行くのはこの第一回のみです。聖書の 末尾の地図をご覧になっていただければわかりますが。第一次宣教旅行は、二次、三次に比べる と短いものです。けれども、往復の移動距離は1000キロにいたります。アンティオキアからキプロス島を経て、トルコの中部くらいまで西に向かいます。決して短い旅ではありません。パ ウロの宣教旅行は、聖霊が主導権を持ちました。神様の恵みによって始まりました。最後まで神 様の恵みによって遂行されます。バルナバとサウロは、主イエスの十字架と復活の福音を語り告 げます。そしてビシディア州のアンティオキア、イコニオン、リストラなどに教会がたちます。 また帰り道に、2人は、各地の教会を励まし、長老を選び出しつつ帰ります。そして、また送り 出されたアンティオキア教会に戻って報告しました。(使徒言行録15:30以下)教会が、異 邦人伝道へと大きく広がっていくダイナミックに歴史が動いた瞬間です。神様は召し出された恵 みの業を最後まで支えてくだいます。

 そして、私達も、与えられた奉仕の一つ一つに応答せんと仕えます。示された奉仕は、神様が 聖霊がお支え下さいます。礼拝から選びだされていく恵みの務めのなかで、神様が私達のうちで 御心をなしてくださいます。パウロは、手紙の中で自分の主にお仕えする働きを振り返って、「 働いたのは、実は私ではなく、私と共にある神の恵みなのです(第一コリント15:10)」と いいました。そして、教会に対しても次のように書き記しました。「あなたがたの内に働いて、 御心のままに望ませ、行わせておられるのは神であるからです。(フィリピ 2:13)」神様が私 達を御自身の御業を進めるため用います。復活の主を喜び祝い、主の恵みに助けられて務めをな し、この1週間を歩みましょう。

祈祷
 御在天の父なる神様、主の御名を讃美いたします。聖霊降臨後第4主日を迎え、教会で・家庭で 一つの命の糧に養われることに感謝いたします。聖霊なる神様、あなたはパウロとバルナバを御 業のために選んだように、また私達を選んでくださいました。小さな私達ですが、神様の恵みが 私達の内に働いて・日々の奉仕を成し遂げさせてください。私達のなす奉仕が、教会の為、世界 の為、あなたの御光を現すためになるよう清め、恵みによってお支え下さい。日々、主の御声を 聴く心を整えさせてください。主の御心に仕えるため・日々私たちを新たにし成長させてくださ い。この祈りを主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン